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ある日のこと。

ほとんど人に話した事がないのですが
今から2年半程前のある日のこと。


私が、今回作品を描くにあたって
思い出さずにはいれない事がありました。

冬に入りかけた寒い夜で雨が降っていました。

私は家族が運転する車の中にいて
0歳の娘はチャイルドシートで眠っていました。

流れる窓の景色をぼんやり見ていると
あるかないか分からないほどの細い白線の上をはみ出しながら
小さな子供二人が手をつないで歩いている姿が
行きかう車のライトに照らされて
また闇に消えました。

見間違ったのかと思いましたが
反対車線の車が慌てて大きくハンドルを切って
避けていくのを見て
「車停めて!子供がいる!」と家族に伝えました。

娘を家族に頼んで、私一人車を降りました。
反対側の道を歩いている子どもふたりに
「そこにいてね!今いくからね!」と叫びました。

街燈もない、暗く長い一本道。
道路にはほとんど歩道は無く、すぐ下は溝と田んぼ。

どこから歩いて来たんだろう、住宅街の明かりはかなり遠くに見えます。

この長い道路の間、こんなに交通量が多いのに
子どもを見つけて止まる車、一台も無かったのだろうか・・・。
場所的に止まりにくい場所だから
見つけても諦めたのだろうか・・・

車が途切れた瞬間を見て二人が道を渡ろうとしました。

本当に危ない・・・
私も道を渡りなんとか二人を明るいほうのこちらの歩道に連れてきました。

男の子5歳、女の子3歳。薄い服装。
どうしたの?と聞くと
二人は兄妹で今から友達の家に行くんだといいます。

「今から?お母さんは?」と聞くと
「お母さんは、赤ちゃんのお世話で忙しいから・・・。」
と男の子。
自分の住所も苗字も分からないと言いうので
とにかく目的地である友達の家まで一緒に行くことにしました。

女の子は携帯電話を首からぶら下げていたけれど
電源は入っておらず役にたたない。

本当にこの時間に出かけなければいけない事情があれば
使えない携帯を子供に持たせたりしないはず。

もう歩けないと半泣きの女の子を抱っこしました。
そして男の子が指を指す方へと三人で歩きました。

冷えきった女の子の体温。
「がんばったね、よくお兄ちゃんと離れずに歩いてこれたね・・・」

かなり歩いたけれど、その友達の家というのは
本当はどこにもないということが、途中で分かりました。
あそこの角、というのでそこまでいくと
もっと先と言う・・・の繰り返し。

お兄ちゃんと言っても5歳。
妹を連れて先頭に立ち、なんとか安全な場所へ行こうと
必死だったのかもしれない。
嘘をつこうなんて気はなかったはず。

話を少しでも聞こうと質問すると
お母さんは赤ちゃんのお世話に忙しくて
自分達が騒いだら叱られてしまった、家を出て行けと言われて
出てきたんだと話してくれました。

本気で言ったのではない母親の言葉を真にうけてしまったなら
母親は今、心配で赤ちゃんを抱えて探しているに違いない。
とにかく警察に連絡しよう。

その時、一日外出していた私の携帯電話も
充電が切れてしまい・・・(なんてタイミング・・)
車を止める場所を探しにいったのか家族とも
離れてしまいました。

もし警察に電話を出来ても、この土地に詳しくない私は
ここがどこかも伝えられない・・・
明るい場所まで行ってから電話をして
子どもも休ませなくては。

私は先に小さく見えたガソリンスタンドまで
頑張って歩こうねと言って
女の子をおんぶして、男の子の手を引いて歩きました。

寒くてお腹を壊してしまった様子の女の子と
お腹がすいている男の子。

道のりが遠く長く感じました。

やっとガソリンスタンドに着いて
事情を説明すると警察に電話をつないでくれました。
私も家族に連絡をして一安心。

トイレを借りて
女の子のお世話をしました。
その間中、靴に描いてあるキャラクターの説明を私にしてくれました。

きれいになってすっきりした女の子は嬉しそうに
私に抱きついて甘えてきました。

販売機の前で好きな飲み物を選んでいいよというと
ストーブの部屋で少しほっぺが赤くなった男の子が
急に子どもらしい笑顔ではしゃぎました。

あぁ、ふたりともかわいいなぁ。
暗い道でも涙をこらえて、本当にえらかった。

おいしそうにジュースを飲むふたりを見ながら

ふたりが事故にあったり
危険な人についていかなくてよかった・・・
私が偶然通りかかって
手をつなげてよかった・・・
と思い、急に力が抜けました。

警察が来て
私の家族も来て
私はふたりと別れました。

「お兄ちゃん、がんばったね。 
 暗い道、こわかったのに妹を守って歩いてえらかったね。」
と男の子に言いました。

女の子は私から離れず、辛かったのだけど
「よくがんばったね、ママが来たらお腹痛かった事を言うんだよ。」
と言ってお兄ちゃんと手をつながせました。


さっきまでは
ふたりの事で頭いっぱいだったけど

車に乗り、自分の娘に会い
ほっとした瞬間、あの兄弟の母親について
帰り道は色々なことを考えました。

私も大変だったけど
警察からの電話があるまで、ふたりのお母さんは
怖ろしく不安な時間だったはず。

でも、どうしてこんな夜に
外に出た子どもを追いかけてこなかったのだろう。
まさかここまで歩くとは思ってなかったのだろうか。

男の子は
もっと早いうちに
家に引き返えそうとしなかった何か決意があったのだろうか。

もし何回もこういう事が起きるような状況なら
あの子達は
ものすごく傷付いていたんじゃないだろうか。
私は
離れてきてしまって、よかったのだろうか。
そして
お母さんには、周りに支えてくれる人がいるんだろうか。


憶測が浮かんでは消え
ただただ
あのふたりがお母さんに会い
思いっきり抱きしめてもらえるように
心細かった気持ちを癒してもらえるように
願いました。

家に帰りしばらくすると
電話があり
ふたりのお母さんからでした。
警察の人に聞かれたので私の番号を書いて置いてきたのでした。

「先程は・・・」と女性の声。
お母さんに会えたんだ、よかった・・・と嬉しかったです。

でも、その声は
子どもに会えた喜びに満ちた声ではなく
とても冷静で
内容も、警察の人に言われたからかけました、という感じでした。

同じ育児中同士として何か声をかけようと思ったけれど
電話は短い会話で切れてしまいました。

お母さんにも何か事情があり、悩みも疲れもあるんだと思う。

でも、どんな理由も一度置いておいて
あのふたりを抱きしめてほしい。

抱きしめてもらえただろうか。

そうだったらいいんだけど
そうでなかったら。

月日がたった今でも
あのふたりは、毎日笑っているかなぁ。
お母さんに大切にされていてほしい。と
ふたりの事を思い出します。

そして、あの日だけの繋がりで終わってしまった事を
少し後悔しています。

ふたりに何かできる事は・・・
あのお母さんと何か話せる事は・・・
本当に何もなかったのだろうか。

他人だから、他人です。それでいいんだろうか。

忘れられない
ひんやりとしたふたりの手と
ひんやりとしたお母さんの声。

あたためる何かが
世の中に必要。

「おかあさんとよぶたび」の絵本を描きながら
後悔と一緒に
何度も思い出した、ある日の出来事です。









 
 

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Author:yu
イラストレータひらたゆうこ
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詳しいイラストブログは、HPより「えかきにっき」へ
お越しくださいね。

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